日日々々

メンヘラキモオタヒキニート 三拍子そろったゴミクズ人間の日々常々変わらぬ毎日

夕暮れ

ボクは夜が好きだった。すべての罪が洗い流されるような、そんな気がして。夜になるといつも外に出た。誰もいない空き地の真ん中で、空を仰いでゆっくりと目を閉じる。夜の静寂とひんやりとした冷気がボクを包み込むような気がした。ほんの少しの非日常感が、どことなく気持ちいい。できることならずっと夜であってほしかった。明けない夜があってもいいのに、そう思っていた。

 

 

ボクの犯した最大の罪、それはこの世に生を受けたことだ。生まれた瞬間から祝福などされず、産声を上げれば恨まれ、手を握れば蔑まれた。呪われた子ども。そんな言葉が脳を掠める。生まれてこなければよかった、何度となくそう思ったし、数え切れないほど言われた。産んだ張本人に、来る日も来る日も。嫌でも生まれてきてはいけなかったことを分かってしまうくらいに。

 

 

ある日の夕暮れ、ボクは一人のおじいさんと出会った。なんてことのない出会いに思えた。

「こんにちは」

腰の曲がりとまっすぐな杖が対照的な老人に、ボクは挨拶をした。田舎育ちにとってすれ違った人に声をかけるのは当然なのだ。

「綺麗ですね」

聞いたこともない挨拶だった。イタリアとかスペインとか、その辺ではこのように挨拶をするのだろうか。いや、よく考えたら違うことがわかった。この老人はボクのことを見ていない。彼が見ていたのは真っ赤に染まった空、沈みゆく太陽のほうだった。

「はい、そうですね」

何の気なしにボクはそう言った。普段は目もくれない落陽が、この目にまぶしかった。太陽はこんなにも力強いものなのか。もう沈んでゆくというのに、あんなにも輝いているのか。目に焼き付いた太陽が、心を燃やしていく。ボクの心に、赤々と火をつけた。

 

 

ボクは夜が好きだった。老人と沈みゆく太陽を見たその日から、ボクは夕暮れも好きになった。

夕暮れはボクに生きる活力をくれた。生まれてきてはいけなかったボクに、生きるためのエネルギーを与えた。そんな夕暮れが、今も大好きだ。

 

 

以上です。半分くらい嘘でできてますよろ。

いじょ